Lincoln Briney / Lincoln Briney’s Party

今年は、全国各地で例年より早く梅雨入りが発表されました。皆さん、この雨の季節をどのようにお過ごしでしょうか？ じめじめと湿気が多くて、洗濯物が干せなかったり、外にお出掛け出来なかったり、色んな不便なこともありますが、雨の日は独特な風情があって、個人的には嫌いではありません。特に、雨に濡れた静かな街並みを眺めていたり、しとしと降る雨音に耳を傾けていると、すっと心が落ち着いていくのが分かります。ということで、今回は雨を素敵に感じられる作品を選んでみたいと思います。

5月29日にアメリカの歌手B・J・トーマスの訃報が届けられました。彼の名前を聞いて、多くの音楽ファンが思い出すのは、はやりバート・バカラックとハル・デヴィッドの名コンビが手掛けた大ヒット曲「雨にぬれても」（原題：Raindrops Keep Fallin’ on My Head）ではないでしょうか。この曲は1969年の映画『明日に向って撃て!』の挿入歌として知られていて、その後、数多くのカヴァー・ヴァージョンが生まれました。中でも、僕が以前からよく聴いたり、選曲したりするのが、男性ジャズ・ヴォーカリストのリンカーン・ブライニーが歌ったヴァージョンです。チェット・ベイカーに似た甘い歌声と、アコースティックに仕立てた軽快なアレンジも絶品です。

そして、ビル・シャーラップとリニー・ロスネスの二人のピアニストによるデュオ作品『Double Portrait』には、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲の「Double Rainbow」（原題：Chovendo Na Roseira、邦題：ばらに降る雨）が収録されています。雨粒のようにきらめくピアノの音色と、みずみずしいインタープレイが素晴らしい一曲です。マルク・シャガールの絵を使ったジャケット・デザインも印象的。まさに崇高でアーティスティックな演奏、それでいて、そっと心に寄り添ってくれる優しさも兼ね備えています。ぜひ、ジャズ・ファンのみならず多くの方に聴いて頂きたいです。

最後は、手前みそですが、僕が2014年に英国のジャズ・ヴォーカリスト、ノーマ・ウィンストンの名演を集めて選曲した『London In The Rain』を紹介します。ノーマ・ウィンストンは70年代から活躍を続け、今もなお多くの音楽家から尊敬を集めて影響力のあるヴォーカリストです。この作品は、ノーマ自身のレーベルに残されたアルバムから選曲しています。幻想的な歌声とリリカルな音がしっとりと溶けあい、心の奥底に静かに響きわたります。優雅で気高い印象をあたえるジャズ・スタンダードを中心に、ジョン・テイラーやフレッシュ・ハーシュとの貴重なデュオを含んだ、まさに彼女の親密な表情を映した珠玉の一枚となっています。

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  Bill Charlap and Renee Rosnes / Double Portrait

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  Norma Winstone / London In The Rain