Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第3回

Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第3回

Ala.Ni / You & I

新しい季節を迎えて、柔らかな光を浴びながら、暖かな日が続いています。皆さん、いかがお過ごしでしょうか? このコロナ禍で外出する機会がぐっと減り、例年以上に春を満喫したいこの頃、そんな思いを込めて、今回は春に聴きたい穏やかな音楽を選びました。

アラ・ニはロンドン出身のヴォーカリストです。凛とした佇まいの横顔を映したジャケット・ポートレイトが印象的ですが、艶やかで優しい歌声と、ヴィンテージの香り漂うジャジーなサウンドが魅力的な一枚です。これは彼女が2016年に、フランスの“No Format!”という良質な作品ばかりをリリースしているレーベルから発表したデビュー作です。何も知らされずに聴くと、40年代の古いジャズ・ヴォーカル作品かと思ってしまうほど、そのノスタルジックな音作りに驚かされます。モノクロ映画のような音楽とでもいいましょうか。こんなに独特の雰囲気をもった作品を他に知りません。冒頭には「Cherry Blossom」という桜について歌った曲が入っています。

ローズマリー&ガーリックはオランダのフォーク・グループです。まずそのネーミングがユニークですね。思わずワインが呑みなくなってしまいますが、やはり歌も音もフレッシュな白ワインのように爽やかな印象を与えてくれます。清涼感あふれる歌声と、ピアノとギターを中心とした室内楽のアンサンブルが心地よい空間を生みだしています。まるで古いトラディショナル・ソングを耳にした時のような懐かしさも感じられます。先日、稲垣吾郎さんのFM番組にゲスト出演した際、このアルバムの中から「Birds」という曲をかけたところ、吾郎さんもとても気に入って頂けました。まさに、鳥たちのさえずりように、軽やかにリズムを刻む風通しのよいアコースティック・ミュージックです。

最後は、インストゥルメンタルのジャズ作品を紹介しましょう。これはイタリア人のトランペット奏者のパオロ・フレスと、フランス人のアコーディオン奏者のリシャール・ガリアーノ、そしてスウェーデン人のヤン・ラングレンによるグループが、2019年にドイツのACTというジャズ・レーベルに録音した作品です。「Mare Nostrum」はラテン語で「私たちの海」という意味で、タイトルに「Ⅲ」と付いているので、シリーズ第三弾ということになります。この三人のプレーヤーはとても相性がよく、アンサンブルを聴いていても、まるで会話をしているかのような親密な雰囲気を感じることができます。ヨーロッパ特有の気品が漂うチェンバー・ジャズという趣で、牧歌的で哀愁漂うシンプルなメロディとハーモニーも魅力的です。収録曲はどれも本当に美しくて、聴き惚れてしまうのですが、中でもヤン・ラングレンが作曲した「Love Land」は、ボサ風味の小気味よいナンバーで、春の陽気にもぴったりかと思います。

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    Rosemary & Garlic / Rosemary & Garlic

  • Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第3回

    Paolo Fresu, Richard Galliano & Jan Lundgren /
    Mare Nostrum Ⅲ

【プロフィール】
山本勇樹
HMV本部にて商品バイイングを担当する傍ら、ラジオやUSENの選曲、数多くのライナー・ノーツや雑誌への寄稿を行い、2014年には書籍『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』を刊行。過去に文具ブランドのデルフォニックスや洋服ブランドのニシカとコラボレーションを実現。また友人の吉本宏と共にbar buenos airesの活動も行う。2016年にはモントルージャズ・フェスティバル50周年の公式リポートを担当した。2020年12月に韓国にてクワイエット・コーナーの新刊を出版。
https://vilakitoco66.wixsite.com/mysite

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PROFILE

山本勇樹

HMV本部にて商品バイイングを担当する傍ら、ラジオやUSENの選曲、数多くのライナー・ノーツや雑誌への寄稿を行い、2014年には書籍『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』を刊行。過去に文具ブランドのデルフォニックスや洋服ブランドのニシカとコラボレーションを実現。また友人の吉本宏と共にbar buenos airesの活動も行う。2016年にはモントルージャズ・フェスティバル50周年の公式リポートを担当した。