Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第8回

すっかり季節も深まり、冬の足音が聞こえてくる今日この頃です。最近はコロナ・ウィルスの感染者も減少し、東京の街並みを見ると、忘れていた賑やかさが戻ってきたようにも感じられます。とはいえ、まだまだ予断を許さない状況です。なんとかこのまま落ち着いて、年末に再びリバウンドが起きないことを祈るばかりです。さて先月は、このコラムでクワイエット・コーナーの新作について書きましたが、今回はバー・ブエノスアイレスについてお知らせがあります。バー・ブエノスアイレスは、友人の吉本宏さんと河野洋志と僕の3人が組んでいる選曲チームのことで、2017年5月にアトラクト・ラルゴさんで選曲会を開催したこともあります。毎年、その活動の一環で、僕たちはコンピレーションCDを発表していますが、その最新作が11月12日に発売されました。タイトルは『bar buenos aires – Otono』、巡りゆく季節をテーマにしたシリーズの第3作目で、今作は「秋の夜更けのピアノ」がテーマになっています。ということで、今回はこの『bar buenos aires – Otono』を軸に美しいピアノ作品を紹介します。

Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第8回

Various / bar buenos aires – Otono

3年前、僕たちは四季をテーマにしたコンピレーション・シリーズの企画を立てました。2019年には「Primavera(プリマヴェーラ=春)」、2020年には「Verano(ヴェラーノ=夏)」を続けて発表しました。今回は秋の「Otono(オトーニョ)」。各コンピレーションは、その季節がもつ色や空気をイメージしながら、穏やかで繊細な音楽が選曲されています。「Otono(オトーニョ)」には、南米や南欧のピアニストを中心に、内に秘めた情熱を感じさせるエレガントなピアノ作品を集めました。洗練されたソロ・ピアノを始め、研ぎ澄まされた音色のギターやヴィブラフォンとのデュオ、澄んだ音色に美が宿るピアノ・トリオ、そしてたおやかなホーンとピアノの共演まで全13曲。ピアノ主体のインストゥルメンタル作品を全編に収め、これまで数多くリリースされているピアノ・コンピとは一線を画した、バー・ブエノスアイレスならではの音の世界が広がります。ジャケットには今回も日本人抽象画家の宮本廣志氏のペインティングを使用しています。四季シリーズのジャケットを並べて頂くと、その絵から季節の音が伝わってくるようです。

Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第8回

Eugene Maslov / Autumn In New England

Quiet Corner -心を静める音楽集- Web連載 第8回

Triosence / Scorpio Rising

おすすめのピアノ作品をもう一枚。ロシア生まれのジャズ・ピアニスト、ユージン・マスロフが、1992年にアメリカで録音した作品は寒い日によく聴きます。クラシックの素養を感じさせる端正なピアノ・タッチはやはりヨーロッパらしく、ビル・エヴァンスといった叙情的なジャズ・ピアノを愛する方にもぜひ聴いて頂きたい逸品。この作品には、「Old Folks」「All Of You」「How Deep Is The Ocean」など定番曲が並んでいますが、この人の演奏は技術もさることながら表現力も豊かで、とても新鮮な気分で聴くことができます。そんな定番曲に混ざってひとつ注目曲が収められています。先のビル・エヴァンスが書いた「My Bells」です。オリジナル・ヴァージョンは1966年作『With Symphony Orchestra』に収録されています。僕も本当に気に入っている曲で、カヴァーを見つけるとつい嬉しくなりますが、このユージン・マスロフのヴァージョンは格別です。ラヴェルといったフランス印象派にも通じる綺麗なメロディに思わずため息がこぼれます。

最後は素晴らしいピアノ・トリオ作品を紹介します。トリオセンスはドイツ出身のベルンハルト・シューラ―(ピアノ)、マティアス・ノヴァク(ベース)、ステファン・エーミッヒ(ドラムス)のよる三人組です。2002年にデビューしたので、もう中堅のポジションにいますが、日本でも人気が高く、いくつかの作品は日本盤としてCD化されています。その中でも一押しなのが、2019年にリリースされた『Scorpio Rising』です(今作からドラムスがトビアス・シュルテに変更)。こちらもヨーロッパらしいリリシズムに溢れ、ジャケット・デザインのような星屑のきらめきを感じさせる作品です。また中東や南米のリズムを取り入れたりして、アレンジメントの幅も広く、何度聴いても心奪われる魅力があります。とにかく名演揃いですが、特に素晴らしいのが「The Stars, The Sun & The Moon」で、かつて僕もコンピレーションCD『CORE PORT × Quiet Corner – Landscape 01』に収めたこともある美旋律がほとばしる名演です。

【プロフィール】
山本勇樹
HMV本部にて商品バイイングを担当する傍ら、ラジオやUSENの選曲、数多くのライナー・ノーツや雑誌への寄稿を行い、2014年には書籍『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』を刊行。過去に文具ブランドのデルフォニックスや洋服ブランドのニシカとコラボレーションを実現。また友人の吉本宏と共にbar buenos airesの活動も行う。2016年にはモントルージャズ・フェスティバル50周年の公式リポートを担当した。2020年12月に韓国にてクワイエット・コーナーの新刊を出版。2021年8月には、7年ぶりの新刊『クワイエット・コーナー 2~日常に寄り添う音楽集』を刊行。
https://vilakitoco66.wixsite.com/mysite

  • バング&オルフセン製品のご購入はこちら
PROFILE

山本勇樹

HMV本部にて商品バイイングを担当する傍ら、ラジオやUSENの選曲、数多くのライナー・ノーツや雑誌への寄稿を行い、2014年には書籍『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』を刊行。過去に文具ブランドのデルフォニックスや洋服ブランドのニシカとコラボレーションを実現。また友人の吉本宏と共にbar buenos airesの活動も行う。2016年にはモントルージャズ・フェスティバル50周年の公式リポートを担当した。2020年12月に韓国にてクワイエット・コーナーの新刊を出版。2021年8月には、7年ぶりの新刊『クワイエット・コーナー 2~日常に寄り添う音楽集』を刊行。